円安とは?円高とは?生活への影響もわかりやすく解説

金融コラム

2024年10月17日

ニュース等でも「円安」「円高」といった言葉を耳にすることは多いですが、どのような状態のことを指しているかご存知でしょうか。

 

なんとなくは理解していても、具体的にどんな影響があるのか、そもそもなぜ円安や円高になるのかがわからないという方も多いかと思います。

 

円安・円高は企業だけでなく日常生活にも様々な影響を及ぼすので、特徴を理解して対策することが大切です。

 

そこでこの記事では、円安と円高にはどのような特徴があるのか、日常生活にどのような影響があるのか等をわかりやすく解説します。

 

後半では、個人でできる円安対策もご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

円安と円高

まずは、円安と円高の基本を確認しておきましょう。

 

円安とは、円高とは

円安と円高は、米ドル(以下「ドル」という。)やユーロ等外国の通貨(外貨)と円の価値を比較するときに使われる言葉です。

 

円安は外貨と比べて円の価値が低くなっている状態、円高は外貨より円の価値が高くなっている状態を指します。

 

円安や円高になっても、日本で円を使って生活している分には通貨の価値の変化を実感することは少ないかもしれません。

 

ただ、円を外貨に両替すると価値の変化がわかりやすくなります。

 

 

1万円をドルに両替する場合を例に考えてみましょう。

1ドル=100円を基準とすると、1ドル=125円は円安、1ドル=80円は円高の状態です。

 

それぞれの場合に、1万円を両替して得られるドルの額は下記のとおりです。

1ドル=100円のとき:1万円→100ドル

1ドル=125円(円安)のとき:1万円→80ドル

1ドル=80円(円高)のとき:1万円→125ドル

 

上記をみると、同じ1万円でも円安の場合に両替すると得られるドルの額が少額に(=ドルの価値が上がってドル高に)なり、円高の場合は得られるドルが大きく(=ドルの価値が下がってドル安に)なることがわかります。

 

円安・円高の基準

円安や円高には「1ドル〇円以上が円安、〇円以下が円高」といった明確な基準はありません。円安や円高は、ある時点と比較したときの水準を表すものだからです。

 

例えば、1ドル=100円と聞くと円高に感じられる方が多いかと思います。確かに、2024年5月の為替レート(通貨の交換比率)1ドル=150円台と比べると1ドル=100円は円高です。

 

しかし、2011年5月の為替レート1ドル=80円台と比べると、1ドル=100円は円安になります。

 

このように円安・円高は比較によって決まるものなので、同じ為替レートでも基準をいつにするかによってどちらになるのかは異なるのです。

 

円安のメリット、デメリット

次に、円安のメリットとデメリットを解説していきます。

【円安のメリット】

・輸出産業の収益が増加する

・外国人観光客が増加する

・海外資産の価値が上がる

 

【円安のデメリット】

・輸入産業の利益が減少する

・輸入品の価格が上昇する

 

円安になると、日本製品を低価格で輸出できるため外国企業の購買意欲が高まり、輸出産業の収益増加が見込めます。

 

また、外貨を円に両替すると円高時より多くの円を得られることも、輸出産業の収益が増加しやすい理由のひとつです。

 

外貨を両替するときに多くの円が得られることは、円安時に海外資産の価値が上がったり、外国からの観光客が増加したりすることにもつながります。

 

デメリットは、輸入品の仕入れにかかる費用が上がることから、輸入産業の利益が減少しやすくなる点です。

 

また、原材料やエネルギー資源の輸入コストも上がるため、国内企業の利益も減少することがあります。

 

円高のメリット、デメリット

円高のメリットとデメリットは下記のとおりです。

【円高のメリット】

・輸入産業の収益が増加する

 

【円高のデメリット】

・輸出産業の利益が減少する

・外国人観光客が減少する

・海外資産の価値が下がる

 

円高時は、基本的に円安時とは反対のことが起こりやすくなります。

 

輸出産業の収益の減少や外国人観光客の減少、輸入産業の収益の増加等です。

 

 

円の価値の決まり方

ここからは、なぜ円安や円高になるのかといった円の価値の決まり方を、為替相場の仕組みを交えて解説していきます。

 

外国為替

外国為替とは、異なる通貨を交換することです。

 

外国為替による取引を「外国為替取引」、外国為替取引が行われている市場を「外国為替市場」といいます。

 

商品の輸出入や外国証券への投資等、国際的な取引の多くは外国為替で行われています。

 

外国為替取引は世界各国で24時間行われているため、為替レートも常に変化しています。

 

為替相場の仕組み

為替相場を決めるのは、通貨の需要と供給のバランスです。

 

例えば、円の需要が高まると円の価値が上がるため円高が進み、反対に円の需要が減少すると円の価値が下がって円安傾向になります。

 

また、通貨の需要と供給は、各国の金利や政治・経済の安定性、経済指標(雇用統計や消費者物価指数等各国の公的機関が定期的に公表するデータ)等、様々なことに影響を受けます。

 

需要の変化と通貨の価値の関係を示す具体例は下記のとおりです。

 

金利

金利が高い→銀行預金や債券投資で多くの収益を得られる→その通貨で資産運用したいと考える人が増える→需要が増える→通貨の価値も上がる

例:アメリカの中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が2015年から徐々に金利を引き上げたことにより、ドル高が進行した

 

政治・経済の安定性

政治・経済が安定している→その国の通貨が信頼されやすくなる→需要が増える→通貨の価値も上がる

例:2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻時、安全資産とされる円やドルが上昇し、ユーロが下落した

 

経済指標の一例

・アメリカの雇用統計で雇用状況が良好→経済拡大につながると予想→ドルの需要が増える→ドル高になる

例:2011年に発表されたアメリカの雇用統計は予想を上回る結果だったため、ドル高が進行した

 

・GDP(国内総生産)成長率が高い→その国の経済が強いと予想→需要が増える→通貨の価値も上がる

例:日本では1980年代後半のバブル期にGDP成長率が高まり、円高が進行した

 

為替介入について

為替介入とは、政府や中央銀行が外国為替市場で自国通貨の売買を行うことで、正式名称を「外国為替平衡操作」といいます。

 

目的は、為替相場の急激な変動を抑えて安定化を図ることです。

 

例えば、円高が進みすぎた場合、政府は円を売って外貨を買い円安に誘導します。

逆に円安の場合は、外貨を売って円を買います。

 

ただ、為替介入には資金が必要なため、何度も実施できるわけではありません。

 

そのため効果は限定的ともいわれており、日本が単独で実施しても効果が長続きしない可能性があります。

 

-トピック-

日本では、為替介入の指示を出すのは基本的には財務大臣、実施するのは日本銀行です。

直近では、2024年4月から5月にかけて急激に円安が進行したことから、約9兆8,000億円規模の為替介入が行われました。

 

 

生活への影響

為替相場の変動は、企業だけでなく消費者にも影響を与えることがあります。ここでは、個人への影響を中心に、円安と円高の特徴を見ていきましょう。

 

円安の場合

円安の場合、輸出企業へのメリットは大きいですが、個人へのメリットはあまりありません。

 

ただ、外貨建ての資産や外国株式等、海外資産を保有している場合は、その価値が相対的に上昇するといったメリットがあります。

 

また、日本の輸出企業の業績向上により、日本株式市場が活性化する可能性も高くなります。

 

ただし、これらのメリットは投資をしている一部の人に限定されるため、金融資産を持たない人には円安のメリットはあまり感じられないでしょう。

 

 

デメリットは、円安になると輸入品の価格が上昇するため、食料品や日用品等の生活必需品、原油等のエネルギー資源が値上がりすることがある点です。

 

賃金が上がらなければ出費だけが増えることになるため、家計が圧迫されかねません。

 

また、円を外貨に両替したときに得られる額が少なくなるため、海外旅行に行く際の出費も大きくなります。

 

円高の場合

円高時は、輸入品の価格が下がるため、食料品や日用品等が安価で購入できるようになります。

 

また、円を外貨に両替したときに得られる額が増えるため、円安時よりも海外旅行の際の費用が抑えられるでしょう。

 

 

一方、海外資産を保有している場合は、円に両替したときの額が減るというデメリットがあります。

 

また、円高は日本の輸出企業の競争力を弱めることがあるため、日本株式市場が低迷しやすくなる傾向があります。

 

そのため、投資家にとってはデメリットが大きく感じられるかもしれません。

 

 

個人でできる円安対策

先述したことからもわかるとおり、個人への直接的なデメリットが大きいのは円安です。最後に、個人でできる円安対策をご紹介します。

 

外貨建ての資産を保有する

外貨建て資産とは、ドルやユーロ等、外貨で保有する資産のことです。具体的には、外国株式や外国債券、外貨預金等がこれに当たります。

 

先にもご説明したとおり、円安時には円の価値が下落する一方で外貨建て資産の価値が上昇します。

 

そのため、外貨建て資産を保有することで、円の価値が下落するリスクを回避することが可能です。

 

とはいえ、「外貨建て資産」というとハードルが高く感じる方もいるかもしれません。

 

そこでおすすめなのが、NISA制度の「つみたて投資枠」を使って外国の株式に投資する方法です。

 

投資先を米国や先進国等にすれば間接的に外国の企業に投資することになるため、円安時に資産を増やせる可能性が高まります。

 

積立投資であれば、少額からはじめられて、かつ価格変動によるリスクも軽減できます。

 

 

ただし、外貨建て資産ばかりを保有すると円高になったときのリスクが大きくなるので、資産を分散させて円建てのものも保有しておくのが理想的です。

 

国内製品に目を向ける

国内製品は輸入コストの影響を受けにくく、円安時にも価格が安定しやすいのが特徴です。

 

食品で考えた場合、輸入された小麦を利用して作られるパンや麺類よりも、国内産の米のほうが基本的には値上がりしにくいということになります。

 

しかし、国内製品も円安の影響をまったく受けないわけではありません。

 

製造過程で使用される燃料や原材料を輸入している場合だと、円安に伴って製造コストが上がりやすいため、商品も値上がりすることがあります。

 

とはいえ、基本的には国内製品のほうが輸入品よりも価格変動が少ないため、円安時にも選びやすいといえるでしょう。

 

 

まとめ

この記事では、円安と円高について解説しました。

 

記事内でも解説したとおり、円安になると食料品や日用品が値上がりする等個人への影響が大きく、家計がひっ迫するおそれがあります。

 

国も為替介入等で円安対策を行っていますが、為替相場は世界各国の様々な事情に影響されるので、日本の政策だけではなかなか打開できないのが現状です。

 

そのため、円安が続いても困らないように個人で対策をしておくことが大切です。

 

とはいえ家計状況は様々なので、記事内で紹介した方法が必ずしも適しているとは限りません。

 

特に投資経験がない方にとっては、外貨建て資産を保有することへの不安や疑問があったりして、手を出しにくいと感じる場合もあるでしょう。

 

外貨建て資産について詳しく知りたい方、ご自身にあった方法で円安対策を行いたい方は、銀行や証券会社等で専門家に相談するのがおすすめです。

 

 

2022年頃からはじまった円安は2024年現在も継続しており、この状況がいつまで続くのかはわかりません。円の価値が下がることに不安がある方は、円安のメリットを活かせる資産運用を考えてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

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