高校での金融教育義務化から1年、必修化の背景や学習内容を改めて解説!

情報コラム

2023年10月5日

20224月から高校の学習指導要領に盛り込まれた「金融教育」。お金の知識は自立して生きていくうえで必須ともいえますが、なぜこのタイミングで高校生に金融教育を行うことになったのでしょうか?この記事では、高校で金融教育が義務化された背景や学習内容について解説します。

 金融教育義務化の背景 

学校での金融教育の推進は、2022年以前から行われていましたが、資産形成や投資に関する内容が初めて盛り込まれたことにより話題になりました。まずは高校での金融教育の必要性が高まった背景について解説します。

成人年齢引き下げによる金融トラブルの予防

20224月に成人年齢が引き下げられたことにより、18歳から親権者の同意なしでクレジットカードが発行できたり、さまざまな契約が行えたりするようになりました。18歳は高校を卒業して自立し始める年齢とはいえ、社会人経験が乏しい人が多いため金融トラブルに巻き込まれかねません。正確に情報を取捨選択して金融トラブルに巻き込まれるのを防ぐために、高校で金融教育を行うことが必要と考えられるようになりました。

資産運用の必要性

日本では少子高齢化が急速に進んでおり、現在の年金制度が破綻するのではないかと危ぶむ声がよく聞かれています。実際に年金の受給開始年齢は段階的に引き上げられており、受給額も減少傾向にあります。そのため今後は、公的年金だけに頼るのではなく、個人で資産を形成する必要性がでてきました。とはいえ知識がまったくない人が投資を始めるのはハードルが高く、大人でもなかなか足を踏みだせない人がいるのが現状です。早いうちから資産運用の重要性を理解し正しい知識をもつことで、積極的に資産運用が行えるようになることが期待されています。 

欧米諸国と比較した日本の金融教育の遅れ

日本では「お金の話を人前でするものではない」というイメージが強く、他人はもちろん家族に対してもお金の話は避けられがちです。先述の通り、日本でも以前から学校での金融教育が推進されてはいるものの、実際にはあまり多くの時間をかけられることなく現在に至っています。

一方、アメリカやイギリスなど諸外国では、小学校36年生になる年齢の頃にはクレジットカードや老後資金、貯蓄などについての知識を身につけています。このように諸外国に遅れをとっている危機感から、日本でも金融教育の必要性を説く声が高まりました。

年代別、身に付けたい金融リテラシー 

金融リテラシーとは、お金や経済に対する知識のことです。実は日本でも高校だけでなく、小学校や中学校でも金融教育が行われています。ここでは金融広報中央委員会の「金融教育プログラム」に記載されている、年代別の目標の一部をご紹介します。

小学生

小学生の低学年では、まずお金やものの価値を知り、大切にすることを目指します。中学年では欲しいものと必要なものの違いを理解し、お小遣いとしてもらったお金を管理できるようにするのが一つの目標です。高学年ではさらにステップアップし、お金のより良い使い方を考えたり、目的のためにお金を計画的に貯めたりする力を身につけることを目指します。そのほか小学生の金融教育の目標として挙げられていることは以下の通りです。

 ・予算の範囲内でものを買うことができる

 ・暮らしを通じてお金の働きを理解する

 ・将来を見越してお金を計画的に使う態度を身につける

 ・税金の種類や意義を理解する

中学生

中学生では自分だけでなく家計の収入・支出について理解を深めます。また金融商品として株式や債権があることを学び、リスクやリターンの関係を知ることを目指します。そのほか中学生の金融教育の目標として挙げられていることは以下の通りです。

 ・貯蓄・運用に取り組む態度を身につける

 ・金利計算を理解する

 ・ローンの仕組みと機能を理解する

 ・社会保障の内容を理解する

 ・カード、スマートフォンを用いた支払い方法の仕組みを理解する

高校生

高校生では、家計全体を意識しながら自分の生活や教育などに使われている費用を知り、考えて行動することを目指します。また預金、株式、債権、投資信託など基本的な金融商品の特徴を理解し、世の中の動きに関心をもつことも求められます。そのほか高校生の金融教育の目標として挙げられていることは以下の通りです。

 ・生涯を見通して資産形成を行う必要性を理解する

 ・期間と金利の関係を知る

 ・投資と投機、賭け事の違いを理解する

 ・ローンの仕組みを知る

 ・年金や社会保障制度を理解する

高校の金融教育の学習内容

金融教育が義務化されたとはいえ「金融教育」という科目が新たに設けられたわけではありません。高校では家庭科や社会科の授業に金融に関する内容が組みこまれます。その特徴として、資産形成や投資に関する内容が盛り込まれている点が挙げられます。ここからは金融庁が公表している「金融経済教育指導教材」に記載されている、高校の金融教育の学習内容をご紹介します。

家計管理とライフプランニング

収入と支出の管理や、将来設計に関する内容です。収入と支出のバランスをみながら貯蓄することの大切さや、多様な働き方による収入の違いなどを学びます。 

【家計管理とライフプランニングのおもな学習内容】

 ・収入源と支出の内訳の把握

 ・給与明細の見方や手取り額の計算方法

 ・シミュレーターを用いた家計管理

 ・どんな人生を歩みたいかを具体的に考える

お金の使い方

お金の使い方の基本や、家計を黒字にするためのポイントなどを学びます。

【お金の使い方の主な学習内容】

 ・現金払いとキャッシュレス決済の特徴

 ・「必要なもの」と「欲しいもの」を区別することの重要性

 ・家計の収支を黒字にするための方法

リスクに対する備え方

病気やケガ、火災、事故など人生で起こりうるさまざまなリスクに対する備え方を学びます。

【リスクに対する備え方の主な学習内容】

 ・人生で起こりうるリスクについて

 ・社会保険制度や民間保険の違いや仕組み

 ・ライフプランニングに合わせた保険の選び方

資産形成

資産形成の必要性や、金融商品の選び方を学びます。 

【資産形成の主な学習内容】

 ・預貯金、債権、株式、投資信託の特徴

 ・金融商品の3つの基準と選び方

 ・利子と金利について

 ・資産運用のリターンとリスクの関係

 ・シミュレーターを用いた資産形成

お金の借り方

お金の借り方や、金利や借り過ぎの注意点などを学びます。

【お金の借り方の主な学習内容】

 ・お金の借り方の種類とそれぞれの特徴

 ・クレジットカードの仕組みと注意点

 ・消費者ローンやカードローンの注意点

 ・奨学金の仕組み

 ・シミュレーターによる返済額の試算

金融トラブル

マルチ商法や個人間融資などさまざまな金融トラブルの例や、トラブルに巻き込まれないための方法などを学びます。 

【金融トラブルの主な学習内容】

 ・金融トラブルの具体例

 ・金融トラブルを避ける方法

 ・金融トラブルに巻き込まれた際の対処法

身近な金融教育から始めよう

親子間でもお金の話は避けられる傾向がありますが、子どもが自立したときにトラブルに巻き込まれたり、お金で損をしたりしないためにも、正しい金融リテラシーを身につけておくことが大切です。早いうちから金融教育を始めることで、難しいと感じがちな資産運用などにも戸惑うことなく積極的に取り組んでいけるでしょう。家庭でできる金融教育の一つに貯金があります。まずはお小遣いやお年玉を貯金することから始めてみてはいかがでしょうか?

 

資産形成は現状把握から

西武信用金庫ではお金に関するさまざまなシミュレーションツールをご用意しています。ライフステージに応じたライフプランの設計、見直しにご活用ください。

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